ひきたよしあき×類塾 特別講座「親子で考える ことばと未来」第2部~分からないを楽しむ力がこどもを強くする~
第1部 昭和の価値観の崩落と子どもたちの歩む未来 →こちら
第2部 分からないを楽しむ力がこどもを強くする ←ココ
第3部 「たくさん失敗談をしよう」子を伸ばす親のあり方 →こちら
今どきの入試と言葉事情
休憩が終わり、第2部は入試や勉強といった、より身近な話題から。
中学入試が大きく変わったのは、実はたった1つの問題がきっかけだったと言います。麻布中の「ドラえもん問題」です。
「麻布中学は一切発表しなかったんですよ、答えというものを」
それはつまり、決まった答えがないということ。子どもが書いた文章をしっかりと見ることができる少子化時代ならではの出題とも言えますが、だからこそそこに子どもの思考、思考力がきちんと表れていることが求められます。
そこで、この日の1番の学びのキーワードが登場します。それが「ネガティブケイパビリティ」です。
「分からない」を楽しもう
「問題が解けない、答えが出せないでうーんと考えてるときってつらくない? でも、そういう時間に脳はめちゃくちゃ伸びている。そう考えることをネガティブケイパビリティって言うんだよ」
ここで先生が出してくれた練習問題の1つは「トロッコ問題」という問題。ハーバード大の学生も真剣に取り組む難しい問題です。先生が説明します。
「将来は運転手がいなくても走る車ができてきます。運転手がいない車がこういう状況になったとき、どちらにハンドルを切るようにするかは人間が設定しなければならない。5人を犠牲にするのと1人を犠牲にするので命の重さはどうなんだろう、保険料というのはどうだろう。こういう問題が解けるか解けないかは、みんなの将来の学問の中にあるということなんですね」
これからの世の中は、答えがあるようでないようなもの。だからこそ「分からないということを楽しむ人が強い。分からない、答えが出ないということは楽しいんだ」と先生。そして「それからお母さん方、もう点数というもので簡単に判断しないということをしてほしい」
今と未来、状況把握ができたところで、先生は次のステップへと話題を進めていきます。ここでは「ことばの粒度(りゅうど)」という新しいことばが出てきました。
ことばの粒度は上げられる
スクリーンに現代人に馴染みのある言葉が映し出されます。「やば」「うざ」「えぐ」などなど。
現代では、さまざまなメディアを通じて山ほど情報が入ってきます。その結果、脳がアップアップになって「もうこういうことばしかで出なくなっちゃう」。声を出してるようで出していない、これを「ことばの粒の度合いが低い」と言うそうです。
親子の会話はどうでしょう。ラインでスタンプを1個押して「帰る」「行く」、了解の「りょ」で済ませてはいないでしょうか。「こんな環境の中で国語の勉強ができるわけがない」と先生は訴えます。
そこで、ことばの粒度を上げるための先生からの提案があります。「何かあったら必ず3フレーズ付けて話す」ということです。
たとえば「コーンに入っているバニラアイスを食べました。その感想を想像して3つ言ってください」と先生。
「冷たくておいしい。コーンがサクサク」
「冷たい。口の中でクリームがとろける。コーンがサクサク」
子どもたちの答えに、先生は「おいしそうだよね。とろけるとかサクサクというのが付いてるから、すごくよく伝わるじゃん」と大絶賛です。
こういうふうに、説明ができるか「やば」で止めてしまうのか、日常の会話が脳を育てる環境の差になります。「ことばの粒度を上げる。簡単なひとことで返すことを極力避けて3フレーズで言う癖を親子で付ける」
ここで2度目の休憩です。